六月のある日、しのつく雨の中……。響夕菜は二人の少女が互いに唇を合わせる姿を見ていた。口づけをリードしている緑色の髪をした少女は、姫野麻衣。夕菜のライバル的な存在だ。そして、口づけを受け入れている少女の名は、早瀬千紗。……夕菜の、誰よりも愛した交際相手であった。自分の彼女が、恋敵にキスされている……。そのシーンは衝撃ではあった。だが、夕菜にはどうすることも出来ない。なぜなら、彼女はこの世界では‘生きていない存在’だったのだ。不可抗力とはいえ、未練を残したまま霊体となった夕菜は、何とか千紗に自分の存在を知ってもらい、自分の想いを伝えたかった。しかし、それは叶わぬことであったのだ。そんな夕菜の元に現われたのは、仙崎伊織という学園の先輩であった。学園内では少々変り者として知られる伊織先輩。彼女はなんと夕菜の姿が見え、会話も出来るのであった。そして夕菜の懸命な努力により、協力することになったのだが……。