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波間の国のファウスト

常夏の島、『直島経済特区』。ビジネスの楽園と謳われる都市。主人公、結城律也にとっては3年ぶりの故郷だ。特待生としてロンドンに出てから一度も戻っていない。島へと向かうヘリの中から街を見下ろす。高層ビルの群れの中、ひときわ高くそびえ立つフェニックスタワーにすら懐かしさを覚えた。律也は久々に再会する幼なじみたちに思いを馳せる。かつて、仲間たちと始めたビジネス。今思えば子供の遊びだった。だがその思い出がこれまでの律也を支えてきた。その幼なじみたちと、ようやく再会できるのだ。しかし、律也の胸には喜びだけではなく、一抹の不安がよぎるのだった。特区に降り立った律也は幼なじみの一人、今川焼屋を細々と営業する若草つぐみと再会する。昔と変わらない笑顔を向けるつぐみに律也は安堵する。だが再会を喜ぶ暇もなく、律也はトップファンドマネージャー試験へのエントリーが認められたことを告げられた。通称‘ハゲタカ’と呼ばれるトップファンドマネージャー。文字通り、経済特区の頂点に立つ存在。ハゲタカ試験は特区の頂点へと駆け上がる、栄光への道に他ならない。この試験を受けることこそが、律也の帰郷の目的だった。律也の前に現れたのは、先んじてハゲタカとなった渚坂白亜。雲の上の存在となった幼なじみ。彼女は、律也とともに試験へエントリーする候補生たちの名前を告げた。そしてその候補生こそ、律也が3年ぶりに再会する仲間たちだったのだ。早乙女凪。新ビジネスを立ち上げながらも高利貸しと揶揄される、新進気鋭の経営者。滝沢和彦。傑物滝沢の御曹司として多角的な経営を行う若きホープ。律也は悟った。ハゲタカ試験に勝ち残るためには、この幼なじみたちを蹴落としていかねばならないのだということを。友はライバルとなり、勝利の栄光とともに敗者の無念がある。勝ち続け、稼ぎ続けること、それが特区のルールだ。はたして律也はハゲタカとなり富を、そして友を貪るのだろうか。それとも……。「私たちは変わってしまった。これはビジネスなの。昔どおりになんて戻れるはずがない」

波間の国のファウスト

作者ひなた睦月 とりしも オダワラハコネ 
メーカーbitterdrop 
シリーズ 
タグゲーム 女子校生 学園もの 恋愛 幼なじみ 
登録日 2012-08-24 
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