文化祭を間近に控える初秋の日。朝倉誠――ハンドルネーム‘セイ’は巷で人気の仮想現実MMORPG「ヘブンズケージ」で、ひとりの少女と出会う。セイはヘブンズケージの初心者である少女にあきれながら世話を焼くうちに、次第に彼女のペースに巻き込まれていく。ネットカフェの仕事をこなしながら、誠は今日もまた「ヘブンズケージ」にログインし、彼女との冒険を楽しんでいた。現実世界での彼女の本当の名前も知らないまま。だけど、それでいいと、誠は思っていた。ゲームに飽きたら、彼女とのつきあいはやめるつもりだった。所詮はバーチャル。リアルとは違う。自分には現実の世界に本当の仲間がいるのだから。そう思っていた。現実世界の仲間たちが次々と失踪するまでは――。